モノクローム
ゲームならば、いつか終わりが来る。
それがいつになるのか、私には検討もつかない。

確かなのは、今日でもなければ、明日でも明後日でも無い事。



「さて…」

長居になるかもしれないゲームの旅路に、理解される事の無い決意をするように呟いてから、携帯を取り出す。
手にしてから色々と考えたが、一番シンプルな言葉を選んだ。



〔しばらく、お爺ちゃんの所に行くから。〕

とても簡素なメール。それで十分だった。
相手は勿論、主人である。
結婚して三年、同居を合わせたら五年も一緒に過ごしている。
その中で、主人が私に関心を持ったのは、最初のたった数ヶ月だけ。
近頃じゃ、言葉を交わす事もなくなっていた。
私の存在など、主人にとってはどうでも良いのだ。

現に、送ったメールに対して返事もして来ない。
まぁ、今に始まった事じゃないけれど…。



「さて…」

私は、またそう呟いて携帯を閉じ、ポケットに戻しながら考えた。



これからどうしよう。



私が持っているのは、いつ電池が切れるか分からない携帯と、僅かな所持金の入った財布がある肩掛け鞄だけ。

これから。それを考えるのは何とも気楽な事なのかもしれないが、長い目で見れば切実な問題が結構ある。

例えば今、汗で湿ってる服や下着をどうするか。とか…


外の世界では、シャワーの音が響いていた。
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