心泥棒!!
な、なんか彼氏みたい(笑)
開始まで30分。
人がさっきより増えてきて、後ろを見るだけで
酔いそうになる。
「ただいまあ。人すっごいよ」
額に汗をかきながら
紙コップを2個持っている。
「はい、心。コーラでよかった?」
「う、ん。ありがとう。」
「サプライズ!!!」
ってほどでもないけどー。と笑うあさひは
本当に楽しそう。
私も今日は楽しもう。
「さああて、STREETコールはじめるよおおう。」
誰かの気合の入った声で
会場が一気に熱を持った。
今まで、売店に並んでいた人も
座っていた人も
外に並んでいた人も
みんなが、叫ぶ。
「「「はーる。こーいち。るーき。ゆーと。STREET。」」」
心臓が脈を打つ。
名前が、彼の名前があった。
背中に冷や汗が流れて、この場にしゃがみ込みたくなった。
おもいっきり、泣いて、暴れて、帰りたくなった。
でも、こんな人ごみの中、しかもあさひを置いて
逃げるなんてできない。
それに、まだ、開始まで20分も
前だというのに
ステージに出てきてしまった
彼らが、目の前にいた。
「どーーーーーもーーーーー。こんばんわーーーーー。」
マイク越しに聞こえる、あの声。
(自分と血のつながったお姉ちゃんに手出して
挙げ句の果てに死なせた
最悪なやつだってことをなっ!)
「STREETと今夜も一緒にもりあがろーーーーーー。」
ふざけるな。
「あさひ、帰る。」
「心?」
「帰る。」
「まって。黙ってたのはごめん。でも!!」
「でも?」
「裕斗さんは会いたがってるんだよ。」
ふざけるな。
もう、振り回されるのはうんざりだ。