心泥棒!!

「心、ごめんな。」



沈黙の中に、響いた彼の声。

綺麗な、澄んだ声。

電車から見る、あの海みたいな声。




「自分勝手なのは分かってる。」



涙で前がかすんで見えないけど、彼がどんな顔をしているか分かる。



「でも、俺。」





鼻をすする音をマイク拾う。



「心が好きだ。」

「裕斗が好きなのは、私じゃない。」


きっと、困ってる。

会場にいるみんなは怒ってる。



私一人のために


ライブが潰れる。



「心だよ。」



力強く言われた、言葉。


揺るぎない、言葉。



「俺は心が、心だから好きなんだよ。」


「違うよ、裕斗が好きなのは・・・。」


裕子さんでしょ?



「裕子は、お姉ちゃんだよ。
それ以外でもそれ以上でもない。」


じゃあ、なんで死なせたの?

じゃあ、どうして愛し合ったの?

じゃあ、どうして?





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