心泥棒!!


「心、ライブが終わったらここにいて。
話したいことが、ある。」


諭すように、優しく言われるほど


心の中の、ドロドロした気持ちが積もっていく。



心の中が、もやもやして、酷く、醜いことを
考えてしまう。



「もう、いやだ。」



私は、ライブハウスを飛び出した。



外は雨が降ってた。


「心!!!!!!」



必死に追いかけてくるあさひの姿が見えて


走るのをやめる。



「風邪ひくよ、とりあえず傘。」


折り畳み傘を差し出してくれた。


「ごめん。心。」


あさひの声も震えてた。


「でもね、裕斗くんとちゃんと
向き合ったほうがいいと思う!!!!」


「もう、関わりたくない。」


自分の声がひどくかすれて低い。


「別れるにしても、話さなきゃだめでしょ?
逃げちゃだめだよ!!!!」


あさひは叫ぶように言った。


「・・・・・。あさひ。」


「ご、ごめん。」


「ライブ終わるの何時?」


「え?」


「何時?」


「8時半予定って書いてあった。」


「そっか。」



雨で、服がべっとりと肌に絡んでくる。


「行くって伝えて?」


あさひにそっと言う。


「うん。分かった。」

あさひは優しく笑って

ライブハウスのほうへ走って行った。
< 34 / 39 >

この作品をシェア

pagetop