心泥棒!!


「心?」


麻生さんに一礼すると

私は、控え室だろう方向に足を進めた。


彼は麻生さんに何か話して
私を追いかけてきた。


「麻生さん、困ってたじゃん。」


「会うのは最初で最後だし、気にしてない。」



彼がどんな顔をしているのか

気になったけど

見るのが怖くて

下を向いた。



「ただいま。」



「おかえり~。」


裕斗が扉を開けて、飛び出してきたのは
あさひだった。

「あさひ?!」


「うお?心~。おかれり~」


抱きついてきたあさひは、顔が真っ赤で

ほんのりお酒のにおいがした。


「あさひ、未成年でしょ!!!!」


べりっとひっつくあさひをはがすと

宏一さんが気まずそうにしていた。


「ごめん、水と間違えちゃったみたいで。俺らの不注意。」


「俺も、ごめん、注意、しなくて。」


ルキさんも宏一さんの後ろから、言う。


「心~。好き~♥」


きゃーと言いながら顔を両手で隠す。


「心、あさひのこと好き~?」


「好きだよ。」


ため息交じりで答えると、

やっほーと飛び上がりながら楽屋を走り回る。



「さっきから、ずっとあんなかんじ。」


苦笑いを含みながら、彼が言った。


「そっか、連れて帰るわ。」


「俺が連れて帰るから。」



憎たらしい声が、部屋の隅からする。


「お前は、裕斗と話すことあるだろ。」


「あんたに、あさひを任せられない。」


「心配すんなよ。俺だって彼女泣かせたりしねえよ。」


「彼女?」


「付き合ってんだよ、俺ら。」


「いつから?」


「1時間まえ?」





あさひは、好きだって言ってた。
でも、こいつがどれだけ
最低なやつか知ってる。


「お前!!!」

私がはるに言い返そうとしたとき


「心ダメ!!!!
はるくん怒っちゃらめらの!!」


あさひがはるの前に立つ。


なんで、こんなやつのどこがいいんだよ




「はるくんは、本当は優しいの。」
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