心泥棒!!
優しい?
こんな奴のどこが
優しいの?
口から出そうになった言葉を
飲み込む
「そっか・・・。」
あさひがこいつと付き合うのに
こっちの関係とか私事は
関係ないもんな
「泣かすなよ。」
「はいはい。」
はるはそう言って、あさひの頭を撫でた。
「心、来て。」
裕斗が腕を引っ張る。
「痛い、ついて行くから離して。」
「悪い。」
静かな廊下に、
私と彼との靴の音しか
聞こえない
気持ち悪いほど静かで
たまに
外の車のクラクションが聞こえる
「なあ、心。」
「なに」
「俺、やぱりお前に側にいて欲しい。」
「できない。」
声が震えて、全身の力が抜けそうになる。
「裕子のことは関係ない!!
俺が好きなのは心だよ。」
優しく、力強く放たれる言葉
それでも
私の心には、裕子という言葉しか
響いてこない
「本当に関係ない?
あるでしょ?」
自分が嫌になる
素直に、心から素直に
側にいたい
と、言えればどれだけ楽だろう
「ある。」
長い沈黙
たった2文字なのに
重く感じる
「最初は、似ててびっくりした。
裕子を重ねようとしてた。
でも、何をしても、何を言っても
心は心だったんだよ。」
私は何も答えなくて
ただ、じっと彼を見てた
「あの日、はるに言われたとき
泣き崩れたくなった。
隠してたかった。心だけには。」
あなたの、纏う
どこか寂しそうで、悲しそうな雰囲気は
初めて会ったあの日に比べて
一層増してる気がする
「なあ、心。俺、もっかい心の
近い存在になりたいよ。」
泣きそうな
叫び声のような
彼の声
でも、私は
過去にけじめをつけにきた
だから