6年目の愛してる
「あ、これ紗絵好きそうだな~。紗絵に似合う」
課長が選んだのは
カスミソウ、ピンクのガーベラ、トルコキキョウという花で構成されたミニブーケだった。
トルコキキョウというのは花弁の上側のふちが青紫で、その他は白色のとても可憐な花だ。
課長には奥さんの紗絵さんがとっても可憐にみえてるんですね!
しかもピンクのガーベラはとってもキュートな花だし、
カスミソウなんて素朴だけども欠かせない存在。
う~ん!ここにも課長の奥さん愛が滲み出てますね~!
「じゃ、俺会計済ませてくるから。ちょっと待ってろ」
課長がレジに向かったので俺は店先で待とうと足を進める。
「うぎゃっ!!」
出口の段差に躓き、転んでしまった。
我ながら思うけど、なんて色気のない声だしちゃったんだ。
女装中なのに・・・。
「やだぁ~、何あの人!変態?!」
「こら、変な人に近寄っちゃいけません!」
「なんだコイツ、キモイな」
周りから聞こえてくる声。
結構派手に転んでしまった俺は痛みに耐えつつ頭をあげる。
そして気づいた。
被っていたカツラが落ちていること、
履いていたスカートが捲れあがっていることに。
注目を集めてしまっている自分の存在に。