晴れ·ﾄﾞｷﾄﾞｷ·ｽﾞｯｷｭﾝ

「面接の時、バイトは初めてじゃないって言ってたよね？」

「はい」

「色々な仕事を体験すること自体はいい。前のバイト先で、何があったかも、僕は聞かなかった」

「……」

「麻美ちゃんは、何日も前から、この店をやめたいと思って、僕と話すタイミングを待っていたでしょ？」

　それ、図星。

　麻美は顔を隠すように、一度も口を付けてなかったコーヒーを、一気に飲み干す。しかし、紙コップの大きさ程度で表情は隠れない。

「もしそうなら、僕は止められない。でも……」

　彼が言葉を区切る。

「君には店にいて貰いたい。僕はそう、思っている」

「どうしてですか？　あたし、本当に役に立っているんですか？！」

　コップ底で、側面から少しずつ溜まったコーヒーが、チャプチャプと音を立てて揺れる。

「ずっと悩んでいたの？　もしかして、こっちに来る前から？」