春夏秋冬【短】




「ほら、あれを。」


そう言って庭の一角を指差し私を見る旦那様


その細くも骨張った綺麗な指先を辿るようにおっていけば、夕暮れ時の橙に染まる景色の中、鮮やかな牡丹色が目についた


よく見れば、牡丹色のほかにも、菜の花色よりもっと濃い黄色や白色の花も咲いていて…


そのやけに美しい色彩をもつ細い漏斗(じょうご)形をした花たちは夕景色によく映えていた


そこで、私はある疑問を浮かべる


あのような鮮やかな花があれば目につくはず…


「あのような花、昼間から咲いておりましたか?」


あんなに可愛らしいのに気付きませんでした!



興奮気味にそう言って旦那様を見れば、旦那様は口元を手で押さえクスクス笑う。



「ふふ、咲いていませんよ。あれは夕方に咲く花なのです。」



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