春夏秋冬【短】




その仕草に、表情に、胸が苦しくなる



「…旦那様、今日は雪が降ってるんですよ。」



それを無理矢理抑え込み、私は楽しい話をする



「ほら、いつかの花筏みたいに、はらはらと舞ってるんです。

すごく可愛らしいの。

これにも何か名前があるのですか?」




静かな室内に似合わぬ明るい私の声


不自然さを隠そうとすればするほど、浮いているように感じる



「…雪にはたくさん、名前がありますよ。
それはきっと…天花(てんか)ですね。」



「へぇ〜、綺麗な名前ですねぇ。

天花かぁ…。

…旦那様、はやく良く成ってくださいね。」



本当は、もう解っている



もう、長くないんだと、


私も、旦那様も、解っている



「…ののかは旦那様と、また景色が見たいです。」



私の言葉に、旦那様は困ったように難色を浮かべた




< 30 / 41 >

この作品をシェア

pagetop