春夏秋冬【短】
その仕草に、表情に、胸が苦しくなる
「…旦那様、今日は雪が降ってるんですよ。」
それを無理矢理抑え込み、私は楽しい話をする
「ほら、いつかの花筏みたいに、はらはらと舞ってるんです。
すごく可愛らしいの。
これにも何か名前があるのですか?」
静かな室内に似合わぬ明るい私の声
不自然さを隠そうとすればするほど、浮いているように感じる
「…雪にはたくさん、名前がありますよ。
それはきっと…天花(てんか)ですね。」
「へぇ〜、綺麗な名前ですねぇ。
天花かぁ…。
…旦那様、はやく良く成ってくださいね。」
本当は、もう解っている
もう、長くないんだと、
私も、旦那様も、解っている
「…ののかは旦那様と、また景色が見たいです。」
私の言葉に、旦那様は困ったように難色を浮かべた