春夏秋冬【短】



今日も旦那様は座っていた

私は暖かい御茶を手に、その隣に座る



「旦那様、何を見ていらっしゃるのですか?」



私が来たことを感じとり、そっと私を見やった旦那様に尋ねれば、旦那様は柔らかく微笑んだ




「桜ですよ。」



そう言って再び視線を戻した旦那様


旦那様の見る方向には、確かに立派な桜の大木がある


けれど、




「…散っていくさまを、ですか?」



満開した桜は散っていくのみなわけで、現に咲き誇っていた桃色は、時たま吹く柔らかい春風に誘われるかの如く、伸びた枝から旅にでていく



桜とは普通、咲いているものを愛でるのではないのですか?


私はそう思い首を傾げた




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