隣の先輩
 その言葉でぴんと来たのが森谷君のことだった。


「クラスメイトですよ」

「そうなんだ」


 そう言うと、先輩は顔を背けてしまった。でも、その表情は難しい顔をしたままだった。


 何を言いたかったんだろう。


「何か用事があれば伝えましょうか?」

「何もないよ」

 なんとなく歯切れの悪い先輩の言葉が気になって、からかうような軽い気持ちからこう言っていた。


「もしかしてやきもちとか?」


 先輩はわざとらしくため息を吐くと、私の頬を抓った。


「なんで俺がやきもちなんてやかなきゃいけないんだよ」

「分かりましたから、離してください」





< 179 / 671 >

この作品をシェア

pagetop