隣の先輩
 一瞬心を読まれたのかと思ったが、先輩を見ているとそういうわけではなさそうだった。


「何がですか?」


「何でもないよ」


 先輩はそう言うと、苦笑いを浮かべていた。


 でも、途中で話を切ってしまった罪悪感のようなものがあったんだろう。


 彼は律儀にも言葉を続けていた。


「もしかして知らないうちに傷つけていたのかもしれないって思ってさ。それなら謝りたいって思っていたから」

「どうして?」

「ずっと話す機会がなかったからかな。あの日、無理に待たせたりしたことも謝ってなかったから」


 一緒の帰ったけど、ほとんど話をしなかったあの日。寂しそうな先輩の顔を思い出していた。
< 268 / 671 >

この作品をシェア

pagetop