隣の先輩
「分かっていますよ」


 先輩はまっすぐで、優しくて、一緒にいると幸せになれて、だから私は好きなんだと思う。


 でも、私は怖くて逃げてばっかりだった。


 それも一方的に決めつけて、勝手に逃げていた。


 真っ先に引っかかるのは花火大会のとき、嘘を吐いたこと。


 本当のことを言ったら、先輩は怒るかな。


 人に言えば黙っていたらいいと言われそうだし、言うことで先輩に嫌な思いをさせるかもしれない。

 でも、そのときは先輩の優しさに少しでも詫びたかったのかもしれない。


 折角誘ってくれたのに、すっぽかしてしまった。


 それなのにお土産を買ってきてくれたり、いろいろ心配をしてくれたりしたから。


「花火大会のとき、体調悪いって嘘なんです」

「え?」

 
 そのとき先輩が眉をひそめているのに気づいた。


 怒られるかもしれないと思ったけど、やっぱり先輩に嘘はつきたくなかった。


「途中まで行ったけど、帰ってきて。あの、ごめんなさい」


 理由は宮脇先輩と先輩が一緒にいてとかいろいろあった。
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