隣の先輩

 それが先輩だと気づくのに時間は掛からなかった。


 横目で見ると、寝息は聞こえなかったが、目を閉じて、眠っているみたいに見えた。


「嘘ばっかり」


 見たいって言って寝ているなんてありえないよ。先輩は。


 本当に恋愛映画には興味がなかったんだろう。


 つれてきてくれたのは、私と咲の話を聞いていたからなのかもしれない。


 あのときの話を聞いていたから、私がこの映画を見たがっているのは気づいていたんだろう。


 もしかして、私が咲と先輩のことで、悲しそうな顔をしていたから?


 理由も違うし、ずれているけど、私を少しでも笑わせようとしたの?


 届かないと分かっているのに、どうしてもこんなことをされたら期待してしまいたくなる。


 先輩とは後半年経ったらほとんど会えなくなるのに。
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