隣の先輩
 私は先輩がおきたのに気付いたけど、何も言わないことにした。


 先輩のほうを見ないことにした。



 ただ、先輩の優しさが分かったから。


 それだけで十分だった。


 なんかそんなことを考えていると、目頭が熱くなってきてしまった。


 悲しい物語だったので、物語の終盤に差し掛かると、すすり泣くような音が聞こえてきた。


 今が映画館でよかった。泣いていても変に思われないから。


 私はそう思うと、軽く自分の唇を噛んでいた。


 映画館の外に出ると、強い日差しが辺りに降り注いでいた。


 私たちは映画館の近くにあるベンチに座ることにした。


 私たちが映画を見ている間にしっかりと照らされていたのか、ベンチが熱いくらいあった。




 先輩はまだ寝ぼけているのか、時折欠伸をしていた。
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