隣の先輩
「ありがとうございます」
私はそう言うと、笑顔を浮かべた。
昨日からして、多分一番の笑顔で笑えた気がした。
先輩はどこかほっとしたような笑みを浮かべているみたいだった。
もう先輩と会った頃とは違う暑い時期。確実に時間は流れているんだ。
照りつける日差しは私にそのことを教えてくれているような気がしたんだ。
夏期補習の後期補習が始まる。
補習が始まると、やっぱり先輩とは今までのようには会えなくなった。
勉強が大変なんだろう。これから、私と先輩が過ごせる時間が増えるわけがない。
時間はずっと減少の一途を辿っていくんだろう。
そのことを分かっていたから、胸の奥が苦しくてたまらなかった。
先輩のお父さんと何度か顔を合わせることもあった。
かっこいいお父さんだったけど、やっぱり先輩とは似ていないなって思った。
先輩は大学に受かったら、一人暮らしをするんだろうか。
それとも、祖父母の家に住むんだろうか。
でも、やっぱりそういうことは聞きにくかった。