隣の先輩
 それが誰なのかまだ知らないけど。


 私は夕方前に咲の家を出た。


 気にしないと思っていたけど、咲にそのことを言われてどこかほっとしていたんだと思う。


 今までもやもやしていたものがすっきりして、心が軽くなるのが分かった。


 軽い足取りで帰る途中、私の視線の先を二人の人影が横切っていく。


 西原先輩と、宮脇先輩だった。


 二人を見て、胸の奥に何かが引っかかるような、鋭い痛みを感じていた。


 やっぱり自分の気持ちを自覚しても


 それでも二人はお似合いと思えるくらいに似合っていた。


 すごく楽しそうに、笑顔で言葉を交わしている。


 歩いていた私の足は止まる。


 私は夕焼けに染まっていく町並みを背景に小さくなっていく二人をただ見つめていた。


「告白なんてできるわけないよ」


 期待しそうになってしまった心を戒めるように、自分で自分に言い聞かせていた。


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