隣の先輩
「宮脇が入っていくのを見たんだ」


 思わずその言葉に反応して顔を背けていた。


 どうしてこう私は分かりやすい人間なんだろう。


 そんな私の頭に依田先輩の手が触れる。


「勉強を教えてほしいって言われただけだよ。真由ちゃんが考えていることはあの二人にないと思うよ」


 そう言われると、顔が赤くなるのが分かった。


 何を考えているか完全に見透かされていたんだ。かなり恥ずかしい。


「そんなに分かりやすいですか?」

「かなり、ね。そんなに気にしなくて大丈夫だと思うよ。稜は不器用だけどいいやつだから」


 私は依田先輩の言葉に頷く。


 そのとき、カチャっという音が聞こえてきた。


 顔をあげると、西原先輩の家の扉が開いていた。

 そこから、西原先輩が顔を出して覗いている。


「あ」


 そんな声とともに、依田先輩の手が私の頭から離れた。


「遅かったから、迷っているのかと思って」


 西原先輩はそう言うと、口ごもる。


「それくらい迷うわけがないって。じゃね、真由ちゃん」


 そう言うと、依田先輩は西原先輩の家の中に入っていった。


 依田先輩も一緒でよかった。そう胸を撫で下ろす。


 やっぱり私は心が物凄く狭くて、先輩が幸せならいいとかまだ思えなかった。
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