隣の先輩
 先輩は体をベンチに預けて天を仰いでいた。


「行くまでに告白とかしたりしないんですか?」

「するかもしれないし、しないかもしれない」


 先輩の答えは何を聞いても抽象的で、はっきりと分からない。


 だから、私は言葉を続けていたんだろう。


「その人に恋人とかできたら、嫌だったりしないんですか?」

「諦めるよ」


 そう言うと、先輩は優しく微笑んでいた。


 その先輩の目はすごく優しくて、その見知らぬ誰かに嫉妬してしまいそうなほどだった。


 先輩にそんな風に思われる人ってどんな人なんだろう。


 すごく幸せな人なんだってことだけは分かる。


 一日だけでいいから、その人になりたい。


 そう思ってしまうほどだった。



 先輩はその人のことが本当に好きなんだって分かった。
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