隣の先輩
 先輩のことが好きだから、そう言ってしまうんだよ。先輩が遠くに行くことを知っているから。


 少しでも思い出を作りたくて。



 先輩はその「好きな人」との思い出を作りたくないのかな。


 それとも今、作る必要がないのかな。例えば、大学が同じとか、離れることがないとか。


 そう考えて、胸の奥がちくりと痛んでいた。


 そのとき、愛理の言葉を思い出していた。


「先輩は一人暮らしをする予定なんですか?」


「一人暮らし? どうして?」

「先輩は寝起きが悪いし」


「しばらくは祖父母の家に住むよ。今、じいちゃんが体を壊しているから、一緒に住んでいたほうがなにかと便利だから。

そこまで大学と離れているわけでもないし。父親は一人っ子で、他に兄弟もいないし、俺が一番自由が利くから。近くの大学にはやりたいこともあるし丁度いいかなと思ったんだ」

「そうなんですか?」


 そういえば、先輩のお母さんが春に家に帰っていたこととか


 先輩が父親の実家に行かないといけないと言っていたこととかも関係あったりするのかもしれない。


 そう考えると、宮脇先輩が一緒に行ってやきもちをやいていたことがなんだか恥ずかしくなってきてしまった。
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