隣の先輩
 それが羨ましい。


 きっと彼女には告白しないといけないとか、そういう気持ちが全くないんだろうなって思うから。


「そういえば、安岡さんは稜の隣の家に住んでいるのよね?」

「はい。そうです」


 先輩か、依田先輩から聞いたんだろう。


「この前、稜の家に遊びに行ったけど、見晴らしがすごくよくて驚いちゃった」


「花火とかも見られるんですよ。もう少し高かったら、もっとよかったかも」

「そっか。花火か」


 私はそのとき、夏の花火のことを少しだけ思い出していた。


 先輩は宮脇先輩と花火を見なかった。


 宮脇先輩は友達と約束をしていたんだから、そんなものかもしれないけど。

「今から帰り?」


 彼女は首をかしげて問いかける。


「そうです」

「もしよかったら一緒に帰らない?」

「いいですよ」


 私は彼女の言葉にうなずいていた。


 私たちは家に帰るために歩を進める。
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