隣の先輩
第30章　忘れるために
　西原先輩も人気があったけど、それだけじゃなかった。


　彼とつきあっていた宮脇先輩もそうだった。


　それはなんとなく予想がついてはいたけど、目の前の情景を見て、改めて確認する。


　でも、私はどうして人の変なところに遭遇してしまうんだろう。


　私の目の前には宮脇先輩と、背中しか見えないけど、背の高い男の人の姿があった。


「ごめんなさい。今は誰ともつきあう気はないの」


　そう言うと、宮脇先輩は頭を下げていた。彼女の長い髪の毛も揺れている。


「好きな奴いるのか？」


　その言葉に宮脇先輩は一瞬、寂しそうな顔をする。

　でも、その表情は彼の問いかけを抑制することはできなかったんだろう。


「西原？」


　彼は連続的に言葉を投げかけてきた。


　宮脇先輩の表情が固まっていた。それはそうだって告げているようなものだった。


　彼女の表情に胸が痛む。

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