隣の先輩
ベランダの向こうで物音が聞こえる。
先輩の手が手すりにかけられるのが見えた。
でも、身を乗り出していなかったんだろう。
先輩の顔を覗くことはできない。
「お前、好きなやついるんだ」
私は先輩の手から目を逸らし、ゆっくりとベランダの手すりにもたれかかる。
そして、天を仰いでいた。そこからは屋根と、淡い空を覗くことができる。
私は目を瞑ると、ゆっくりと息を吐く。
「いますよ。私ももう十五だから」
「そっか。お前の気持ち、相手に届くといいな」
届くか届かないのは先輩次第。でも、そんなことを言えるわけもなかった。