隣の先輩
「そうですね。多分、失恋しちゃいますけど」


 そう言うと、少しだけ笑っていた。


「そんなに脈がない相手なんだ」

「すごく遠い人です」


 近いけど、やっぱり遠い。


 先輩は今、何を考えているんだろう。


 多分、親の愚痴を聞くみたいに、どうでもいい話って思っているんだろう。


 そんなことは当たり前だから。


 先輩は好きな人のことを思って悲しくなったことってありますか?

 もし、あって、それが好きな人なら、その誰かは誰なのか分からないけど

 私の知らない誰かであるくらいなら、宮脇先輩であってほしいって思っていた。


 今でもそう思っている。あの人なら「分かる」から。


「万が一、誰かに失恋したときはいくらでも泣き言を聞いてやるよ」


 先輩は穏やかな言葉を並べていた。


 その言葉に、目の辺りがじんわりと熱を持つのが分かった。


 先輩はその誰かが自分だって思っていないんだろう。



 それは恋愛対象に「私」が入っていないからかもしれない。
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