隣の先輩
 私が髪の毛を直す前に、先輩の手が私の頭に触れた。


「寝癖みたいになっているよ」


 そんな言葉が恥ずかしくて、いまいち反論できなかった。


「風が悪いんですよ」


 かいがいしくそんなことをしなくてもいいのに、先輩の指先は私の髪を整え、離れていく。


「そうだな」


 先輩はそう言うと笑顔を浮べていた。


 さらさらの先輩の髪は同じ風でも大きく乱れることはない。


 いいなあと横目で見ながら思っていた。


 もう期末も終わり、先輩とこうして学校に行くのは数えるほどだった。


 そして、先輩が大学に受かれば、もう会えなくなる。


 私は首に巻いているマフラーをしっかりと結びなおす。


 マフラーがゆるくなっていて、その隙間から冷たい風が入ってきているからだ。


「今年は雪、降るかなあ」



「雪、好きなんだ」


「大好きです。一度、ゆきだるまを作ってみたいの」


 よくテレビとかで北のほうで雪が降っているのを見ると、いろいろ大変なのかもしれないと思っても、

そういう一面の銀世界になんとなく憧れてしまう。
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