隣の先輩
先輩の困ったような声が聞こえてきた。
相手の人は、少し声の低い感じの女の人。
でも、聞いたことのない声だった。
誰と話をしているんだろう。私はその誰かが気になり、隙間から覗こうとしたときだった。
「……安岡真由は無理だよ。ありえないから。彼女とかそういう対象じゃない」
私の名前。そして、それを言ったのはもちろん西原先輩の声だった。
胸の奥がずきんと痛んだ。心の奥に重石が乗ったように重くて、苦しい。
何の話をしているの?
真っ先に問いかけた疑問がそれだった。
「やっぱり。そうだと思った。仲良くしているからまさかって思ったけど」
そう笑うように言ったのはさっき聞こえてきた知らない女の人の声。
「友達と彼女はやっぱり別だから」
そう淡々と語り聞かせたのは、誰でもない先輩の声だった。
そして、その言葉が今まで話をしていた、二人の会話を総括しているようなものだった。