隣の先輩
 その言葉を認識し、心臓が高鳴る。


 頭の中で考えていることが、心臓の音によってかき消されてしまいそうなほど、大きな音が響いていた。


 別に私の陰口を叩いているわけでもない。


 普通の言葉だった。


 ただ、私は恋愛対象外だと言っただけ。


 その言葉に胸の奥が痛む。


 どうして分かりきった言葉で痛むんだろう。


 それはどこかで先輩は私を好きでいてくれるたんじゃないかって期待していたからだ。


 これでよかったんだって思う。


 これで。


 でも、これでいいと思っていたはずなのに、痛みを感じるほど唇を噛んでいた。


 私は先輩を待つことができずに、その場から離れることにした。


 足元がぐにゃぐにゃと、スポンジの上を歩いているような感覚だった。


 頭は強い鈍器のようなもので殴られたみたいに、痛くて、頭がぐらぐらとした。


 私はふらつきを感じながら、階段をおりる。そして、昇降口のところまでなんとかたどり着いた。


 靴を履き、校舎の外に出る。


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