隣の先輩
 私と同じように悲しそうにしていたからか、あまり表情を崩さない彼がそんな顔をしていたからか、よく分からなかった。


「西原先輩のこと?」


 私はうなずく。


 私の気持ちは結構筒抜けだったから、彼が知っていてもおかしくない。


 愛理や咲も私の気持ちを知っていたからだ。


「好きだったの。すごく、ね」


 先輩があれだけ素敵な人と付き合っていてもどこかで期待していた。


 先輩は私に優しかったから、他の子と違う気持ちを持っていてくれるんじゃないかって思っていた。


 でも、それは恋愛感情ではなかった。ただ、子供だから優しくされただけなのに、バカみたいに期待していた。


 宮脇先輩のことを知って、もしかしたらと思っていた。


 先輩は私のことなんかなんとも思っていない。


 分かりきったことなのに、涙が止まらなかった。


 森谷君はそんな私の傍に、制服が色を変えていくほどぬれていくのに、傍にいてくれた。
< 492 / 671 >

この作品をシェア

pagetop