隣の先輩
 先輩のことで、比較的仲はいいが、クラスメイトに迷惑をかけてしまったことが、何だか忍びなかった。


 五時を過ぎると、一気に空気が冷え込んでくる。


 私は愛理たちと別れ、家への道を急ぐ。


 せめで雪でも降ってくれたら、感じる寒さが少しはマシになるかもしれないと思ったときだった。


「安岡」


 振り返ると、そこには森谷君がいた。


 昼休みのことを思い出し、真っ先に謝ることにした。


「昨日のことだけど、ごめんね」


「いいよ。そんなこと」


 彼はそこで言葉を切る。そして、咳払いすると、私を見据えていた。


 その瞳は余りに真剣で、痛いくらいだった。何を言っていいか分からずに彼を見ていた。
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