隣の先輩
 でも、手の平より少し大きいくらいの雪だるまなら作ることができた。


 私はそれを二つ作ると、重ねてみた。


 小さな雪だるま。


 私はそれを見て、なんとなく笑顔を浮べる。


 そのとき、部屋から甲高い音が聞こえてきた。


 私の携帯電話の音。


 私は窓を開けると、部屋に戻る。そして、濡れた手で携帯を握る。


 発信者は先輩だった。


「今、ベランダで遊んでいた?」

「何で分かるんですか?」

「変な声が聞こえたから」


 変な声。雪を触って冷たいとか言っていたからかな。


「変な声って。冷たいとか?」


 電話口から笑い声が聞こえる。


 からかわれているのか、本気なのか分からない。


「そんな感じ。でも、雪が降ってよかったな」


 先輩の優しい声が聞こえてきた。


 私はその言葉に表情を綻ばせる。

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