隣の先輩
第39章 チョコレート
 一月が過ぎ、二月になる。


 二月の上旬にはお店がバレンタイン一色になる。


 先輩とほとんど会うことはなかった。


 会いに行けば会ってくれるのは分かったけど、先輩の邪魔をしたくなかったからだ。


 それに思いがけない受験後の約束が楽しみだったからというのも、先輩にあまり会いに行かなかった理由の一つかもしれない。


 お菓子屋さんの店頭には見たこともないようなチョコレートが並ぶ。


 お店によっては特設売り場みたいなものを設けているところもある。


 今まで見たことのないお店や国のチョコレートもあったりして、チョコレートが好きな人にはすごく嬉しい時期なんだろうなって思う。


 愛理はチョコレートの箱を手に取りながら、眺めていた。自分の兄にあげるんだとか。


 咲はその好きな人にあげるつもりはないらしい。


 私はトリュフの入った箱を見つけ、手に取る。


「真由は先輩にあげないの?」

「告白はしないと思うから」


 私はそう答えるしかなかった。


「でもあげたいなと思っているんでしょう?」


 見透かしたような言葉だった。やっぱり顔に出やすいんだと思う。


「先輩が誕生日プレゼントをくれるんだって」


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