隣の先輩
そんなことない。
私は首を横に振る。
「残るものがほしい」
それを一つの思い出にしたかったのかもしれない。
その言葉に先輩は驚いたような顔をしていた。
私は口にして、しまったと気づく。
「お前って半券とか残しておくタイプだろう?」
「は、半券?」
「映画のチケットとか」
「取ってますよ」
「何でも思い出として残しておくのがすきなんだ」
先輩は笑顔で言う。
でも、友達と遊びに行ったときと、先輩と行ったときは違っているから。
そんな気持ち先輩に通じるわけもないけど。
何も言えなくなって、顔を背けたときだった。
私の視界に綺麗な髪をなびかせている人の姿が映り、彼女をじっと見つめていた。
その人の名前を思い描いた直後に、その奥にいる人の存在に気づいてしまった。
宮脇先輩よりもかなり背の高い長身の人。
時折、彼女と話をするたびに、足をとめる。
その度にその人の顔が確認できた。すごく顔立ちの整った男性だった。