隣の先輩
第41章 気持ちの在処
 それから雪はより激しさを増し、降り続く。


 外は暗い世界と対照的に白いものが埋め尽くそうとしていた。


 いつもなら本当にその情景が嬉しくてたまらないのに、全く心が弾まない。


 そんな景色をただ眺めるだけだった。


 夜の八時半を回ったとき、私の携帯が鳴る。もう私が家に着いて、一時間が経過していた。


 発信者は先輩だった。


 でも、いつものようにドキドキはしなかった。それは宮脇先輩が傷付いている姿を見てしまったからかもしれない。


「もしもし?」


 淡々とした声で先輩に話しかける。


「今、家だよな?」

「そうですよ」

「お前、宮脇と一緒に帰ったんだよな? あいつどこかに行くって行ってなかった?」

「え?」


 私は宮脇先輩に家まで送ってもらった。


 その後当然彼女は家に帰ると思っていた。


「まだ帰っていないんですか?」

「らしい。大丈夫だとは思うけど、帰りがけチラッと見たけど顔色も悪かったし。時間も時間だし。教えてくれてありがとう。今から悠真さんと探してくるから」



 先輩は宮脇先輩の顔色が悪いことに気づいていたんだ。


 でも、その原因が自分だってことは気づいていないんだろう。
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