隣の先輩
 すぐにエレベータ乗り場に行く。運よく、エレベーターはこの階で止まっていた。


 私は扉を開けると、エレベーターに乗り込んだ。


 一階に着くと、輝くように光るエントランスを抜けようとした。


 すると、私の携帯が音を鳴らしていた。


 先輩かもしれないと思い発信者を確認したが、そこに書いてあったのは母親の名前だった。


 私は迷ったけど、電源を切っておくことにした。


 そのままマンションの外に出る。


 外の世界の空気は宮脇先輩と歩いたときとは違う、刺すような風に変わっていた。


 木々には白い雪が積もっていた。


 その寒さに臆しそうになったが、この場に立ち竦んでいると母親に捕まってしまう可能性がある。


 そう考えると、まだ柔らかい雪を踏みしめ、その公園に行くことにした。

 公園への道のりを半分ほど進んだときだった。


 前方から暗がりに浮かぶ赤いコートを着た女性が歩いてくるのが見えた。



 私はその人の顔を確認しなくても、その人が誰か気づく。思わずその人に駆け寄っていた。


 私の足音が聞こえたのだろう。その人は顔をあげ、私を見る。


 その人は驚いたように目を見開いていた。
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