隣の先輩
「真由ちゃん? どうして?」


「心配していたんですよ。私も先輩も探していて」


 その言葉に、宮脇先輩の表情が強張っていた。


「ごめんね。携帯の電池が切れてしまっていて。さっき気づいたの」


 私は何度も首を横に振る。


 先輩が無事でいてくれて本当によかった、と思ったからだ。


「どうしてこんな時間まで」


「家に帰る気がしなくて、ちょっとぶらぶらしていたの。

そしたら無性に昔のことが懐かしくなってしまってね」


 そのときの宮脇先輩の瞳はすごく悲しそうだった。


 それでも彼女が笑顔を浮べていたので、余計悲しくなってきてしまった。


「本当、ごめんね。こんなになるまで気づかなくて」


 宮脇先輩の手が私の頭に触れる。私の頭には雪が積もっていたんだろう。


 家から飛び出すことばっかり考えていて、傘のことなんてすっかり忘れていた。


「私のことは気にしないでください。体も強いし。でも、宮脇先輩が」


 彼女の頭には雪が積もっていた。


「大丈夫。家まで送るよ」
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