隣の先輩
 私が階段をあがって教室のあるフロアまでたどり着いたときだった。


「佳織」


 その声を聞いて、思わず声の主を見ていた。


 そこにいたのは先輩と宮脇先輩。


 今まで宮脇と呼んでいたのが佳織になった。


 それは二人がつきあうようになったということなんだろうか。


 もし、そうだと考えてみても、ショックはなかった。


「どうしたの? 稜」


 笑顔で宮脇先輩が応じていた。



「放課後さ……」

 私はそんな二人の会話を聞いて、表情をほころばせる。


 きっとあの宮脇先輩の気持ちが通じたんだ。


 迷子だった気持ちもやっと居場所を見つけたんだと思った。



 美男美女のカップルはそれだけで目を引く。


 二人とも浮気とかしなさそうだし、ずっと親しい状態が続くんだろうなって思うから。


 三年は三年で忙しいみたいで、その日、先輩と言葉を交わすことは特になかった。
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