隣の先輩
彼が言ったように先ほどの場所から五分も離れていなかった。私はほっとため息を吐く。


道案内すると言わなかったのは多分、余計な不安を抱かせないためだろう。


 その道を抜けると行きたかったお店の前に到着する。早速、母親から頼まれた品を買うことにした。


帰りはこの辺りには珍しい高層のマンションなので迷う心配はほとんどなかった。


ビニール袋を手に抱え、家のある通りまで来るとほっと息を吐いた。


こうして目印が見えているのといないのでは安心感が違う。そして、茶色の外壁のマンションだった。


ガラス戸の奥にはまだ真新しい白い壁が張り巡らされていた。

自動扉を抜け、その突き当たりにあるエレベーターのボタンを押そうとしたとき、長い腕が目の前を横切る。
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