隣の先輩
 私は愛理たちと別れると、その先を森谷君と帰ることになった。


 今日はやけに暖かい。あの二月中旬の寒さが嘘みたいだった。



 私たちは互いに口を開くことはなく、無言で家に帰る。家の近くに来たとき、森谷君から話しかけられた。


「あの二人って」


 私に気を使っていたのか、そこで言葉を噤む。二人というのは先輩と宮脇先輩のことだろう。


「そうだと思うよ」


 名前で呼ぶことはそれだけ特別だってことだと思うからだ。


「そっか。でも、先輩は宮脇先輩のことを友達としてしか思っていないように見えたけど」


 森谷君は府に落ちないというような表情を浮かべている。


「人の気持ちって変わるし。宮脇先輩ならいいかなって思うんだ」


 それは紛れもない私の本心だった。今はそう思える自分にすごくほっとしていた。


 私の初恋は実らなかったけど、最後に相手の不幸や別れること、そして嫉妬でしかない気持ちを抱かなくて良かったって思う。


 そんな自分は嫌いだし、こういう気持ちを抱けた私の初恋はすごく幸せだと思う。


 宮脇先輩と西原先輩がすごくいい人だったから。


「不思議と今も幸せなんだ」


「安岡がそれでいいなら、それでいいけどさ」


 森谷君は息を吐く。

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