隣の先輩
 幸い家には誰もいなかった。私は宮脇先輩を部屋に通す。


 そして、彼女に紅茶を出した。


 彼女は笑顔を浮かべると、その紅茶を飲んでいた。


「お菓子、探してきますね」

「気を使わなくていいよ。私、真由ちゃんに話をしておかないといけないことがあったの」


 きっと先輩のことなんだなって思った。


 私は「分かりました」と言うと、宮脇先輩の目の前に正座をした。


 彼女は顎に手をあて、少し考えたような仕草をする。


「稜から私のことは前の彼女としか聞いていないんだよね?」


 私はうなずく。


 宮脇先輩は目を細めて少し寂しそうに微笑んでいた。


 私は宮脇先輩を見る。彼女は何かを思いつめたようにじっと考えていた。


 もっと笑顔を浮かべ、つきあうことになったと言うのかと思っていた。でも、そういう雰囲気ではなかった。


「私と稜はちゃんとつきあっていたわけじゃないんだ」



 一瞬、彼女の言った言葉の意味が理解できないでいた。


 頭の中のいろんな考えを整理して、宮脇先輩に問いかける。


「でも先輩は彼女だって」


「それは私のことを気遣ってくれたんだと思う。稜は私のことを好きじゃなかった。分かっていたから」
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