隣の先輩
「はい。今、小学六年です」

「そうなんだ。全然似てないね」

「よく言われます。弟はお母さんに似ているって。私は両親に似ていないから」


 今はそうでもないけど、子供のときは両親と似ていないといわれるのが、なんとなく嫌だった。


「でも、そんなものだよね。俺も全然両親と似ていないから」


 でも、西原先輩の両親はきっとかっこよかったり、綺麗だったりするんだろうなと思って、顔をあげたときだった。


 西原先輩は笑っていた。


 そう言って笑った笑顔は屈託もない笑顔で、綺麗な笑い方ではないけど、なんかいいって思った。



 大人びた笑い方ではなくて、可愛いと思う笑い方。


 そんな彼を見ていると、話しかけることができなかった。


 それは彼の笑顔をずっと見ていたいと思ったからだった。

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