隣の先輩


 それは昨日依田さんに対して言っていた態度に似ている。


「そんな意味じゃないですよ」


 慌ててそう訂正した。


 昨日、西原さんが私とは距離を置いて接していると気づいてしまった。


 でも、それはきっかけの問題だったのかもしれないということ。


 少しだけ先輩との距離が縮まった気がして、うれしかった。


「行こうか」


 思いがけない言葉に先輩を見た。


「行き先が同じだし、わざわざ別々に行く必要もないかなって」


 その言葉で素直に思ったのがうれしいということだった。


 その言葉で、心の奥が弾むのに気づく。


 もう道が分かるのに、それでも誘ってくれたのがうれしかったのだ。


「そうですね」


 そう言うと、エレベーターまで歩いていくことにした。

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