隣の先輩
 空を見上げると、白く淡い色をした星が夜空に瞬いている。


 私は先輩が買ってくれたネックレスをじっと見つめていた。


 チェーンを持って、首の後ろに回し、はめる。その宝石を指先で軽く弾く。


 先輩は明日、引っ越してしまう。そのことを考えると、心の奥にもの寂しさを感じる。


 大好きなのに、信じているのに、不安なんてないはずなのに、心の奥の私の知らない場所にぽっかりと穴が空いたみたいに物寂しかった。どこか矛盾した気持ちでいっぱいだった。



 私は深呼吸をすると、網戸に手をかけた。


 軽くすれるような音が響く。履物を履くと外に出た。空を見上げる。


 家の中で見るより、空が広く、多くの星が瞬いているように見える。


 遠くで瞬く星をほんの少しだけ垣間見ることができるように、先輩の姿を垣間見ることができればいいのに。そんなことを考えていた。


 弱気な気持ちを振り払うために、何度も首を横に振った。


 深呼吸をすると、声を出す。


「先輩、そこにいますか?」


「いるよ」


 先輩の声がすぐに聞こえてきた。


 確証があったわけじゃない。なんとなく先輩がそこにいる気がした。その予感は当たっていた。


 私は寂しさを紛らわせるために声を聞きたかった。
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