隣の先輩

 先輩に甘えることもあるとは思う。でも、その前にもう少しだけ強くなろうと決めたんだ。


 先輩に成長したって言ってもらえるように。そして、私の憧れた人たちに一歩でも近づけるように。


 次に先輩が私に会ったとき、私のことを今までよりももっと好きになってもらえるように。


「宮脇先輩は元気ですか?」


「元気だよ」


 私はそんな先輩の声を聞いて、胸を撫で下ろす。


「じゃ、そろそろ行くから。またな」


 先輩はそう言うと、電話を切る。

 電話を切ると、携帯を鞄の中に入れる。


「安岡」


 後ろから声をかけられた。


 振り返ると、森谷君がそこに立っていた。


「おはよ」


 私は先輩とのことを思い出す。


 彼に先輩とのことを告げたほうがいいのかな。


 愛理たちに電話をしたときに、彼に電話はさすがにできなかったからだ。ただ、相談に乗っていてくれただけなら、言うことはできたと思う。


 でも、告白されてそのことを教えるのは無神経なのかもしれないと思ったからだ。


「電話、先輩から?」

「うん」


 森谷君は私の言葉に目を細めていた。
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