隣の先輩
その指がエレベーターのボタンを押していた。思わず手の主を確認する。
だが、彼の姿を視界に映したとき、思わず声を上げそうになる。立っていたのはさっきの男の人だった。
彼も私のことを覚えていたのだろう。目を細めて私を見ている。
「ここの住人だったんだ」
私は笑顔でうなずいていた。
ほんの一時間前の出来事で彼が覚えていても不思議ではない。だが、そんな些細なことが心をくすぐる。
「そうみたいですね」
そのとき、うなり声と共に、エレベーターの扉が開く。