百万回のイエス
冬
彼女
冬の空は薄く絵の具をさっと塗ったように、平面な青をしてる。
彼女はぼうっと上を見つめていた。
長い、まっすぐ腰まで伸びた髪は綺麗に栗色をしている。抜けるように白い小さな顔を惜しげもなく、上を見て晒していた。
朝っぱらから、何やってるんだろう。
これが、俺の最初の感想。入社して2年目で、だんだん慣れてきた会社へと向かういつもの通り道。
駅に向かう道は国道に面していて、交通量も多い。
誰もが足早に通り過ぎる、排気ガスと朝の雑多さに満ちた道に彼女は立っていた。
真っ白の大きなボタンのついている、お人形さんみたいなコート。下から少しだけスカートが覗いている。
ブーツから伸びる素足を見て、自分が寒い気になって鳥肌が立った。