星を食べたら
「約束だよ」
少女は笑っていましたが、約束ができるかわからないといって息を吐きました。
やっぱり寒いのか手は冷たく体は震えて、青年がどんなに抱きしめても折れそうな体は暖かさを失うばかりでした。
「見て」
震える指が夜空を指します。
星が一つ二つ闇に落ちていきました。
青年は不幸の星を恐ろしげに見つめ、微笑んだままの彼女を見詰めます。
「……いやだ、いやだ!!ずっと一緒にいるんだろ!?君が好きなんだっ!!」
青年は初めて少女の前で泣きました、少女はにっこり笑うだけでなにもいいません。
突然、空気を震わす動物の鳴き声が世界を包みこみました。
あの海が上へと押し上げるように形を変えたかと思うと海全体が水柱になり空を貫いたのです。
キラキラと虹色に輝く鯨が灰色の海を押し退け夜空へと羽ばたいたのです。