星を食べたら
「なんだ!?」
悲鳴は青年だけでなく世界が悲鳴をあげるように震えだします。
鯨はひもじさのあまり夜空の星を食べだし、星の大群は鯨にぶつかるとどんどん地上へと降ってきました。
「逃げるんだ!!」
青年は少女の手を引き丘から遠ざかりました。
その瞬間ー。
カッ!!と周りが白くなりチカチカする目を開けると先程の丘の先に七色に輝く星が落ちていたのです。
暗闇に刺すような光がゆらゆら煌めき直視できない青年は隣にいるはずの少女が手を繋いでいないことに気付きました。
少女はふらつく体で星に近づきます。
星の煌めきが彼女を見えなくする。
「……あ、あぁ…!?やめろ…」
どんどん不幸の星に近づく彼女が見えなくなる。
まるで星の光が、揺れる煌めきが、青年を押し退けるように声も体も突き放します。
少女が星を両手で掬い上げます。
にっこり笑ってこちらを見つめると僕に言った。
「見て、こんなに綺麗なのに不幸をもたらすのかな?」
楽しそうに、可笑しそうに微笑む彼女は今までで一番、美しい女性になっていた。