あなたと夢

「ただいま。」
「....遅くない?」
「へ?...まだ6時なってないし....。」
「あっそ...。さっさとご飯作ってよ。」

"お帰り"くらい言えよ。そう思いながら部屋へ向かう。
かばんをおいて、i podで絢香の"おかえり"を聞く。
最近の日課にもなっている。
高2になったばっかりの時。テレビから聞こえたこの曲。
この曲を聴くと、さっき"おかえり"って言ってもらえなかった時のショックが少し消える。

「おかえり~♪sweet home♪」

やばっ...つい熱唱しちゃった...。母さんに聞こえていませんように!

「璃緒?あんた歌ってるの?」

パタパタとスリッパの音が聞こえる。
ガチャっとドアをあけた。
母さんは私のところに来て、

「バカじゃないの?」

そうクスリと笑った。

「私...歌手になりたいの!...邪魔しないでよ...。」
「無理。そんな夢..捨てたほうがいいと思うわ。」
「なれるよ!友達だって応援してくれてる!」
「ハァ?友達?応援?だから何?」

母さんは私の喉を思いっきり抓る。

「無理なもんは無理よ!あんたは私の奴隷にでもなりなさい!」

そのまま私を壁へ突き飛ばす。

「目が覚めたら、歌なんて興味なくなるわよ。」

母さんはそういい残して部屋を出て行った。

"そんなこと言わないでよ!"

そう叫ぼうとしていた時だった。
声が出ない。声が出ないよ母さん。
喉が焼けるように痛い。
やだよ...。お願い。誰か。助けて?
こんなに簡単に夢を終わらせたくないよ...。
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