キョウアイ―狂愛―
元々、召使い達はクレアには危害を加えるつもりはなく、ここまで追い詰めた以上後は捕らえるのみだが、仲間内に動揺の広がる中、誰一人クレアに近寄れない。
じりじりとした硬直状態が続く。
「リドルの名を語るのであればまず、リドル家にお戻りくださいな。クレア様」
召使い達の後ろから、凛とした鈴の音のような高い声が響いた。
スッと異形の集まりが道を開く。
奥から異国の服を身に纏った少女、マイメイが現れた。
顔には出さないでいたが、マイメイも少なからずクレアの様子の違いに驚いていた。
「我は怒っている……マイメイ。
数々の無礼、種族は違えど我と寝食を共にした者達への無情な仕打ち。
そして執拗な追跡。
何故、我を放っておかぬ」
クレアは一見微笑みを浮かべ話しかけるが、その目には力が篭って威圧感をありありと浮かべている。
そこにはおとなしく儚げなクレアの面影は微塵もなく。
しばらく見合っていた二人……
クレアの視線がふとそれた。
「まぁ…下位のこやつらに駄々を捏ねたところで、頂点に座するお前が聞く耳を持たぬのならばしようのない事……」